スポンサーサイト
-------- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑
コトワリ
2007-10-12 金
「おい、貴様ちょっと待て」
神経質そうな中年紳士が、調子の良さそうな一人の若者に声を掛けた
「え?俺?」
「そうだ、貴様のことだ」
「なんだよ、おっさん」
若者は、鬱陶しいな、といった態度でそう答えたが、この紳士の風体が自分の世界とはあまりにもかけ離れている存在だったので、無意識な好奇心からか、その呼び止めに足を止めて答えた
もしかしたら、おいしい話かもしれない
「おい、貴様は海人(うみんちゅ)なのか?」
「はぁ?」
全く予想のしていなかった紳士からの問い掛けに、若者は一瞬、虚を突かれ狼狽したが、すぐに冷静になって自分の今着ているTシャツのことだと理解した
「あ~コレ?デザインかっこいいっしょ?結構人気あるんだぜ」
「そんなことは聞いていない、もう一度言う、貴様は海人なのか?」
紳士は、先ほどと全く同じ口調で同じ質問を若者に投げ掛けた
表情は、まるで金属でできているかのような無機質な冷たさで、そこから、この紳士の意図していることは何なのか読み取ることはできなかった
若者は少し怖くなったが、その恐怖心が彼の口調の語気を強めた
「海人じゃねーよ!そもそも海人ってなんだよ?うぜーよおっさん」
「なんだと!貴様…」
紳士の口調は微かに強くなったが、表情は依然、無機質のままだ
「海人とは、沖縄の方言で漁師のことだ、貴様は漁をするのか?」
「はぁ?んなわけねーだろ」
「では、なぜ貴様はそのTシャツを着ている?」
「ロゴのデザインとかが気に入ったからだよ!うるせーな!大体なんでテメーにそんなこといわれなきゃいけないんだよ!」
若者の心は、すでに恐怖心を凌駕して、怒りに変わってきていた
しかし、紳士は若者から発せられるその怒りを感じ取っているのかいないのか分からないような態度で無表情のまま、あらためて若者の目を見つめさらに、質問を続けた
「そうか、貴様は今は海人ではないが海人を志すものなのか!もしくは海人に憧れているのだ!そうであろう?」
「何なんだよ!しつけーな!だから海人ってなんだよ!」
「何ぃ!まさか本当に海人に対しての関心は無いというのか?」
「だから海人って何なんだよって言ってるだろうが…」
若者は埒があかない、と思ったのか怒りもピークを超えてしまったので「何なんだよ…」と、踵を返して紳士の元から去ろうとした
去っていこうとする若者に対して、紳士は今までよりもさらに無機質な表情で、まるで念仏でも唱えるかのように独り言ちた
「理念や思想無き服装…実に不快だ」
遠ざかっていく若者の背中のある一点に視線を捉えたその直後、とても人間の動きとは思えないほ程の迅速な身のこなしで若者の位置まで踏み込み、瞬時に懐に持っていたブロンズナイフを抜き、流れるような動きで背中から若者の急所へナイフを突き立てた
若者は、何が起こったのか解らないような、悲しそうにもとれる表情で振り返り、紳士のジャケットの裾を掴んで、そのまま崩れ落ちた
若者が裾を放さなかったので、留められていたジャケットのボタンが引き千切れ、ジャケットは紳士の肩からずり落ちた
そして若者は薄れていく幽かな意識の中で最後にジャケットの裏地にある刺繍を見た
そこには金色の糸でこう書かれていた
“Gentleman(ジェントルマン)”と

それから、しばらく経った、とある日、紳士が女性に声を掛けていた
「おい、貴様はニューヨークが好きなのか?」





こういうのブラックユーモアっていうの?


別窓 | バカコラム | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<<【砦蟹街】カニと私 | 生きるだけで精一杯 | 【双 壁】そろそろ限界>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

| 生きるだけで精一杯 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。