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くじらの話
2008-09-06 土
ショートショートのようなもの

恋人のミカと、あるワインバーに行ったときの話。

俺はマスターに、おすすめのアラカルトを伺うと、マスターは無言でにっこりと微笑み、それから数分経ったのちに、先ほどと同様の微笑みを携えながら、無言で一つの皿を俺たちの前に差し出した。

「ねえ、これなぁに?」

どうやらカルパッチョのようだが、牛肉ではない何かの切り身を怪訝そうに見つめているミカに、俺はその切り身を一口パクリと食べて、こう答えた。

「うん、これはクジラだ。クジラのカルパッチョだね」

「ええっ!やだ~、クジラがかわいそう。。。」

そう言って、今にも泣き出しそうな表情でうつむくミカを横目に、俺はもう一口パクリとクジラの切り身を口に入れた。
それは実にうまかった。


それから、しばらくしたある日、一人で海岸線をドライブしていると「おーい」という声が聞こえたので、俺は車を降りて辺りを見渡した。
すると、どうやら一匹のクジラが浅瀬に打ち上げられてしまったようで、立ち往生して動けなくなっていて、今にも力尽きそうな様子だった。
俺はクジラの元に駆け寄りたずねた。

「さっき、おれのこと呼びました?」

「ああ、そうだ」

クジラは腹の底に響くような声だが、小さくゆっくりとそう答えた。

「おれに何か用ですか?」

「いや、特に大した用でもないんだがのう」

「見たところ、今、お困りのようですけど、助けを呼んで欲しいとか?」

「ああ。。。いや、それはいい。そういうわけじゃあない。うん、少々言いにくいのだがズバリ言おう。。。わしを食ってくれんかのう」

クジラはあらためて俺の目を見据えなおして、続けた。

「わしは知っておるよ。キミは先日、わしの同胞を食っただろう。わしは見ての通りもうダメだ。どうせくたばるなら食われてくたばりたいのだよ。わしはそうやって弱者を食らって生きてきた。それが自然の摂理というものだ。だからわしもその摂理の中で死にたい。まさか、食用として飼育されていない生き物を食べることは罪悪だ、なんて考えはないのだろう?ということで頼まれてくれんかのう」

「それは出来ません」

「ううむ」と頭を抱えるクジラに、さらにこう続けた。

「確かに俺は先日、あなたのお仲間を食べました。でもですよ、それは人間の狩りに敗れたクジラだからです。そのクジラは人間と戦って負けて死んだんです。もちろん人間が狩りをするのも自然の摂理だと思ってますよ。自分達人間だけがその摂理から外れた存在だというおこがましい考えではありませんよ。人間が糧とするために狩りをしたのだとすれば、きちんと食べるのが礼儀だと思います。だから食べました。でも、あなたは違うじゃないですか。人間の狩りとは無関係なクジラまでも糧にしようなんて、そんな野蛮人ではありませんよ」

クジラは「ふう」とため息をついて、しばらく沈黙してしまったが、また「ふう」とため息をついてから、こう言った。

「ううむ、人間は勝手だのう。そんな言い分なんてわしらにはわからんよ。人間と戦って死のうが、こうして、人間とは無関係のところで死のうが、どのみちそれも自然の摂理ではないのかね。そこの間に大した差なんてないだろう。自分達が関わっていること、関わっていないこと、どちらにしても、何かと都合のよい理由をこじつけているだけのように見えるんだがのう」

俺は確かにクジラの言うことも一理あると思った。
そこで、あることを思いついた。

「では、こうしましょう。俺は今から今にも死にそうなあなたを狩ることにします。ではいきます」

クジラは納得したように「人間は勝手だのう」と、微笑み、俺は「そうですね」と力の限りクジラの目の中に拳を突き入れて、クジラが絶命したのを確認して、その大きな横腹にかぶりついた。
少々生臭くも感じたがそれは実にうまかった。

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この記事のコメント
私の好きな感じの作品で、楽しく読ませていただきました!

雰囲気が凄く丁寧に作り込まれている気がします。

サプライズをありがとうございます
m(_ _)m(_ _)m(_ _)m
2008-09-08 月 | URL | かみざい #-[ 編集] | top↑
>かみざい様へ

ご来訪、そして、わざわざコメントまでしていただいて、
ありがとうございます!

確かに。。。サプライズですよね。。。(笑)
管理人本人すら、方向性が全く見えない、
自己満足、且つ、乱雑なブログと化しており、
なんだか、ふと思いのままに、書いてみて、
そのまま投稿してしまいました^^;

重ねてお礼を言いますが、本当にありがとうございました!
2008-09-08 月 | URL | ネコエサ #MsJ8A4vY[ 編集] | top↑
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